初めての恋のお相手は
9
――……



「…思ったんだけど、祠堂さんって
楸ちゃんの事、好きなんじゃないかな?」



こゆさんが何気なく口にした言葉に
私は抱えていた段ボールを床に落とす。



「ああっ!」



かシャンッ!と
段ボールの中に入っていた調理器具が
あたりに散らばり、私は慌てて回収する。



……よ、良かった、壊れてない……



「あらら。大丈夫?」

「…大丈夫、です…」



ほっと息をつきながら
調理器具を段ボールの中に戻す。

こゆさんも、しゃがみこんで手伝ってくれる。



「ごめんね、唐突に」

「…びっくりする冗談はやめてください」

「冗談じゃなくて、本当に思った事だよ」



こゆさんは私から段ボールを受け取ると
それを机の上に置いてから、振り返り、私を見る。



「恋人のフリにしては、ちょっと
熱が入りすぎてるような気がするんだよね」

「…」

「…その顔を見るに
楸ちゃんもそう思ってるんじゃない?」

「…」



かーっと熱くなる顔。
それを見て、こゆさんが真顔で指摘する。
< 89 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop