スパダリ救急救命士は、ストーカー被害にあった雑誌記者を溺愛して離さない~必ず君を助けるから。一生守るから俺の隣にいろ~
「瑠花、待っていてくれ。すぐにこの手錠を外すから」
 蓮は救助隊に金属ハサミを要求し、虎二郎と瑠花の手錠のチェーンを切る。
 そしてすぐに瑠花の手首の輪の部分も。
 力が入らない瑠花の手首を少しだけ持ち上げると、赤くなってしまった手首に蓮はキスをした。

 こんな場所のこんなシチュエーションなのに王子様のような振舞いの蓮に瑠花の頬は赤く染まる。

「ねぇー、俺の手錠は切ってくんないの?」
 虎二郎の質問には答えずに、蓮は金属ハサミを救助隊にさっさと返してしまった。

 蓮はTシャツを脱ぐと瑠花の首に被せる。

「おそらく脱臼している。患部を固定するから少し痛みを我慢してくれ」
 蓮は力が入らない瑠花の右手をTシャツの袖口に通し、裾を腕に被せた。

「大丈夫か? 苦しくないか?」
「……大丈夫。さっきより全然痛くない」
 それにTシャツから蓮の香りがして安心するなんて変態ぽくて言えないけれど。

「松岡虎二郎、放火容疑で署まで同行してもらう」
「証拠はあるのかよ、証拠は!」
 どうせ何もないだろうと笑う虎二郎を横目にスーツの男性は「証人がいる」と答えながら瑠花の方を振り返った。

「ありがとう。うちの子どもたちと妻を守ってくれて」
「あっ! あの赤ちゃん連れの……」
 警察官の奥様だったんだ。
 あの子も無事に降りられたんだよね。よかった。

 ガシャンと再び上の階からガラスが割れる音が響く。

「とりあえずここを逃げてからだ」
 蓮が瑠花を連れてはしご車のバスケットに向かって歩き出した瞬間、ドオンという地響きと共にマンションが大きく揺れた。
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