嘘つきと疫病神
写真を眺める仁武の表情は優しさに溢れているが、蕗としては理解できず怪訝な面持ちになる。そのことを知ってから知らずか、仁武は蕗に見せつけるようにその表情を見せた。
「目を瞑っちゃっているのに、そんな写真がほしいの?」
自分を写した写真ではあるが、見るからに残念な写り方をしていることくらいは蕗にも分かる。思ったままの疑問を問えば、仁武は写真から目を離して真っ直ぐと蕗の目を見つめた。
「目を瞑っているとかブレているとか、そういう失敗は関係ない。俺が蕗っていう存在を写真に残したくて撮っただけ。たった一枚の紙切れなのに、思い出が記録できる写真ってすごいと思わない?」
写真に対して興味など微塵も感じていなかったし、感じないと思っていた。
けれど命の危険から救い出してくれた勇者のような存在は、自分にとって興味を示さない写真を愛している。彼が写真を愛しているからこそ、少しだけ良いものなのだと思えたのかもしれない。
「そうだね。……写真って、すっごく素敵」
だから仁武にとっても、自分の好きなものが理解されることに喜びを感じた。それこそ、相手が蕗だからなのかもしれないが。
椅子に座っている蕗は自分よりも小さく見える。立っている時は同じくらいか、気持ち高い気がする身長もこうして見ると案外にも小さい。歳の割に低い訳では無いが、身体つきが華奢であるため余計にそう見えるのだろう。
ふうわりと微笑む蕗は、風呂に入って清潔感を取り戻したからか、随分と可愛らしい。まじまじと見つめていれば蕗が不思議そうに小首を傾げるから、余計に口には出せなくなった。だが、口に出す必要すらない。この想いは仁武の胸の中にだけあれば良いのだから。
「そろそろ夕飯の準備を始めたいから、手伝ってくれないかね」
奥から顔を出した祖母が蕗に向って声を掛ける。いつの間にか打ち解けたらしい蕗は、笑顔を浮かべて祖母の元へと駆け出した。
その後ろ姿を眺めながら何か声を掛けたいと強く思う。けれど思っているだけで何も言えない。
もどかしさと焦りで持っていた写真をぎゅっと握り締めた。暖簾を潜ろうとしていた蕗がそんな仁武に気が付き、随分と穏やかな微笑みを向けた。
「仁武? どうかした?」
きっと蕗から声を掛けてくれなければ、ずっと突っ立っていたままだったかもしれない。
彼女から声を掛けてくれたおかげで、喉の奥で留まっていた言葉がすんなりと口から零れ落ちる。
「なあ、また、撮らせてよ」
不器用な仁武なりの感情表現は、鈍感で何を考えているのかよく分からない彼女に届いたのだろうか。
段差に足を掛けたまま振り返った蕗は、仁武のそんな言葉の真意をすぐに悟った。
そうして優しく微笑んで小さく頷く。
「もちろん」
互いに救い救われる。ぎこちないながらも動き出した時間が、少しづつ二人の距離を縮めていった。
「目を瞑っちゃっているのに、そんな写真がほしいの?」
自分を写した写真ではあるが、見るからに残念な写り方をしていることくらいは蕗にも分かる。思ったままの疑問を問えば、仁武は写真から目を離して真っ直ぐと蕗の目を見つめた。
「目を瞑っているとかブレているとか、そういう失敗は関係ない。俺が蕗っていう存在を写真に残したくて撮っただけ。たった一枚の紙切れなのに、思い出が記録できる写真ってすごいと思わない?」
写真に対して興味など微塵も感じていなかったし、感じないと思っていた。
けれど命の危険から救い出してくれた勇者のような存在は、自分にとって興味を示さない写真を愛している。彼が写真を愛しているからこそ、少しだけ良いものなのだと思えたのかもしれない。
「そうだね。……写真って、すっごく素敵」
だから仁武にとっても、自分の好きなものが理解されることに喜びを感じた。それこそ、相手が蕗だからなのかもしれないが。
椅子に座っている蕗は自分よりも小さく見える。立っている時は同じくらいか、気持ち高い気がする身長もこうして見ると案外にも小さい。歳の割に低い訳では無いが、身体つきが華奢であるため余計にそう見えるのだろう。
ふうわりと微笑む蕗は、風呂に入って清潔感を取り戻したからか、随分と可愛らしい。まじまじと見つめていれば蕗が不思議そうに小首を傾げるから、余計に口には出せなくなった。だが、口に出す必要すらない。この想いは仁武の胸の中にだけあれば良いのだから。
「そろそろ夕飯の準備を始めたいから、手伝ってくれないかね」
奥から顔を出した祖母が蕗に向って声を掛ける。いつの間にか打ち解けたらしい蕗は、笑顔を浮かべて祖母の元へと駆け出した。
その後ろ姿を眺めながら何か声を掛けたいと強く思う。けれど思っているだけで何も言えない。
もどかしさと焦りで持っていた写真をぎゅっと握り締めた。暖簾を潜ろうとしていた蕗がそんな仁武に気が付き、随分と穏やかな微笑みを向けた。
「仁武? どうかした?」
きっと蕗から声を掛けてくれなければ、ずっと突っ立っていたままだったかもしれない。
彼女から声を掛けてくれたおかげで、喉の奥で留まっていた言葉がすんなりと口から零れ落ちる。
「なあ、また、撮らせてよ」
不器用な仁武なりの感情表現は、鈍感で何を考えているのかよく分からない彼女に届いたのだろうか。
段差に足を掛けたまま振り返った蕗は、仁武のそんな言葉の真意をすぐに悟った。
そうして優しく微笑んで小さく頷く。
「もちろん」
互いに救い救われる。ぎこちないながらも動き出した時間が、少しづつ二人の距離を縮めていった。