嘘つきと疫病神
輝かしい笑顔で仁武が駆け寄ってくる。その様子を見ていた老婆が奥へと去っていくものだから、再び仁武と二人きりの時間が生まれた。
「綺麗になったな。よし、これで仕事ができる」
「仕事?」
「さっき手伝ってほしいって言っただろ? これだけ身なりが整えば十分に良いものができる」
そう言ってこれまでは手首を掴んでいたのを、真正面から手を握ってきた。一瞬驚きに身を引くが、思っていたよりも強く握られていて逃げ出せない。逃げる必要など無いはずなのだが、身体が遠慮に似た何かに襲われた。
仁武は不器用でありながらも強引なところがある。手を引かれて機械と向かい合うようにして設置されている椅子に座ると、その機械を覗き込むようにして仁武が立つ。
機械の奥から籠もっていながらも優しい仁武の声が聞こえた。
「じっとしててよ」
カシャッと子気味の良い音を立てると同時に眩い光が機械から放たれ、反射的に目をぎゅっと瞑った。肩が上がり、身体が強張っている。
機械の向こう側から顔を出した仁武は何処か楽しげに笑っている。蕗としてはされるがままだったため、何が仁武を喜ばせているのか分かるはずもない。
しばらく時間が必要だと言って店内を忙しなく駆け回っていた仁武が、一枚の紙切れを持って椅子に座っている蕗の傍に寄った。にやにやと笑いながら得意げにその紙切れを差し出す。
「どうして笑うの……」
差し出された写真を受け取りながら怪訝な表情を浮かべる。変わらずクスクスと笑う仁武を無視して写真に目を落とした。
酷い。
緊張に強張った身体は縮こまっているし、目は皺が寄るほどに強く閉じられている。初めてだとは言えここまで酷いと仁武が笑うのも無理はない。
とは言え勝手に撮っておいて笑うのもどうかと思うが。
「だって思いっきり目を瞑ってるからさ」
「……仕方がないじゃん、初めてだったんだから」
蕗の不貞腐れた声を聞いて仁武は居た堪れなくなって指先で頬を掻いた。こういう時にどう声をかけたら良いのか分からないところも、彼が不器用であることを加速させる。
不器用な彼なりに彼女に対する優しさがあるにはある。その優しさが返って彼女を戸惑わせることには、変わらず気が付かないままなのだが。
「なあ、その写真俺がもらってもいいか?」
「え?」
蕗の返事を聞かずに写真を取り上げると、嬉しそうに頬を綻ばせて眺め始めた。
写真館の中にある写真の中でも随一で失敗作であるだろうに、どうしてここまで嬉しそうにするのか理解できない。ましてやそんな写真を欲しがるなど以ての外である。
「綺麗になったな。よし、これで仕事ができる」
「仕事?」
「さっき手伝ってほしいって言っただろ? これだけ身なりが整えば十分に良いものができる」
そう言ってこれまでは手首を掴んでいたのを、真正面から手を握ってきた。一瞬驚きに身を引くが、思っていたよりも強く握られていて逃げ出せない。逃げる必要など無いはずなのだが、身体が遠慮に似た何かに襲われた。
仁武は不器用でありながらも強引なところがある。手を引かれて機械と向かい合うようにして設置されている椅子に座ると、その機械を覗き込むようにして仁武が立つ。
機械の奥から籠もっていながらも優しい仁武の声が聞こえた。
「じっとしててよ」
カシャッと子気味の良い音を立てると同時に眩い光が機械から放たれ、反射的に目をぎゅっと瞑った。肩が上がり、身体が強張っている。
機械の向こう側から顔を出した仁武は何処か楽しげに笑っている。蕗としてはされるがままだったため、何が仁武を喜ばせているのか分かるはずもない。
しばらく時間が必要だと言って店内を忙しなく駆け回っていた仁武が、一枚の紙切れを持って椅子に座っている蕗の傍に寄った。にやにやと笑いながら得意げにその紙切れを差し出す。
「どうして笑うの……」
差し出された写真を受け取りながら怪訝な表情を浮かべる。変わらずクスクスと笑う仁武を無視して写真に目を落とした。
酷い。
緊張に強張った身体は縮こまっているし、目は皺が寄るほどに強く閉じられている。初めてだとは言えここまで酷いと仁武が笑うのも無理はない。
とは言え勝手に撮っておいて笑うのもどうかと思うが。
「だって思いっきり目を瞑ってるからさ」
「……仕方がないじゃん、初めてだったんだから」
蕗の不貞腐れた声を聞いて仁武は居た堪れなくなって指先で頬を掻いた。こういう時にどう声をかけたら良いのか分からないところも、彼が不器用であることを加速させる。
不器用な彼なりに彼女に対する優しさがあるにはある。その優しさが返って彼女を戸惑わせることには、変わらず気が付かないままなのだが。
「なあ、その写真俺がもらってもいいか?」
「え?」
蕗の返事を聞かずに写真を取り上げると、嬉しそうに頬を綻ばせて眺め始めた。
写真館の中にある写真の中でも随一で失敗作であるだろうに、どうしてここまで嬉しそうにするのか理解できない。ましてやそんな写真を欲しがるなど以ての外である。