刹那に触れる兎
「今日もわたしに指一本触れないで帰るつもりですか?」
わたしが煙草をふかしながらそう訊くと、諏訪さんは「それはレミさんが俺の女になってからって決めてるんで。」と言った。
「それなら、一生わたしに触れることはないですね。」
「さぁ、それはどうでしょうね?」
そうこうしている内に時間終了のベルが鳴った。
諏訪さんはソファーから立ち上がると、「また会いに来ます。」と言い、部屋から出て行った。
諏訪さんは、変なお客だ。
高いお金を払って、ただ話して帰るだけなんて。
まぁ、弁護士だからお金に余裕があるんだろうなぁ。
そんなことを思いながら、わたしは煙草を灰皿に押しつけると、声を掛けにきた男性スタッフに「今日は23時で帰るから。」と伝え、そのあと3人の男性の相手をして、わたしは退店し、自宅に帰宅した。
家に帰って来ると、わたしはまず身に纏っている服全部と下着まで脱ぎ捨て、シルクのガウン一枚だけを羽織る。
自宅でもお店でも、基本的にわたしはこのスタイルなのだ。
それなりに良いマンションには住んでいるが、ここには寝に帰って来るだけ。
わたしは布団に横になると、次の日のお昼頃まで眠りについた。