恋愛短編集10作品
「分からないから、聞いたんだよ。」
距離を縮め、彼女の手首を捕まえた。
あっけない瞬間に、物足りなさが募る。
「逃げないの?」
捕まえておきながら、それを問う自分の矛盾。
幼さを自覚し、同い年の彼女を捕らえながら、距離を意識する。
「可愛いわね。」
感情を逆撫でされた。
彼女の手首を握る力が、強くなるのが分かる。
制御できない感情に比例する俺の行為に、痛みも気にせず彼女は首を傾げた。
そっと、自由な手で俺の頬に触れる。
「捕らえたつもり?」
見つめる瞳が、俺を映しているのを意識して、目を逸らす。
「この手は離さない。」
「ふふっ、エッチ。」
カッと頬が赤くなるのを自覚した。
「君の胸に触れた事、他の人に言えば良い。それは、君が夜に忍び込んだのがいけないんだ。」