恋愛短編集10作品

「分からないから、聞いたんだよ。」

距離を縮め、彼女の手首を捕まえた。
あっけない瞬間に、物足りなさが募る。

「逃げないの?」

捕まえておきながら、それを問う自分の矛盾。
幼さを自覚し、同い年の彼女を捕らえながら、距離を意識する。

「可愛いわね。」

感情を逆撫でされた。
彼女の手首を握る力が、強くなるのが分かる。

制御できない感情に比例する俺の行為に、痛みも気にせず彼女は首を傾げた。
そっと、自由な手で俺の頬に触れる。

「捕らえたつもり?」

見つめる瞳が、俺を映しているのを意識して、目を逸らす。

「この手は離さない。」

「ふふっ、エッチ。」

カッと頬が赤くなるのを自覚した。

「君の胸に触れた事、他の人に言えば良い。それは、君が夜に忍び込んだのがいけないんだ。」


< 64 / 76 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop