【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
 当時、両親は大いに嘆き悲しんだらしい。当然だ。愛する我が子が、自分たちのせいで呪いをかけられてしまったんだもの。
 けれど、嘆いたところで現実は変わらない。

 二人はすぐに、私の結婚相手を選びはじめた。そうして選ばれた男性が公爵令息のメレディスだった、というわけだ。


『はじめまして、皇女様』


 私たちがはじめて会ったのは、お互いがまだ四歳の頃。最初のうちは結婚相手としてではなく、単なる遊び相手の一人として紹介された。

 当時の私は呪いのことも知らなかったし、恋愛とか結婚とかとは無縁なところで生きていた。……いや、生きているつもりだったというのが正しい。
 両親は、私のもとにたくさんの同年代の男の子を連れてきて、私やお相手の反応をつぶさに観察していた。私を死なせずに済む結婚相手は誰なのか、と。


『私、メレディスのことが好きよ』

『僕もオウレディア様のことが大好きです』


 彼に決まったきっかけはきっと、そんなささやかな会話だった。私たちが十歳のときのことだ。


『いいかい、メレディス。必ず、オウレディアのことを心から愛し続けるんだよ』

『はい、陛下』


 そのときはメレディスも私も、どうしてお父様がそんなことを言うのか、その理由を知らなかった。皇女と婚約をするんだから当たり前、ぐらいの認識だった。


 私たちが真実を知らされたのは、今から一年前のことだ。魔女の呪いのこと、もしもメレディスが私を愛してくれなかったら私は死んでしまうってことを、私たちはお父様に教えられた。

 そのときからきっと、メレディスは私との結婚を気に病んでいたんだろう。


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