【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
(どうしよう……)


 学園に戻り、寮に向かう道のりをトボトボと歩く。普段は図書館で勉強に励んでいる時間だけど、今日は無理だ。勉強したところで無駄になるかもしれないと思うとあまりにも辛い。


「ラナ嬢?」


 と、誰かに声をかけられる。振り返ると、アンベール様がそこにいた。


「アンベール様」

「お父様との話は終わったの?」

「……ええ」


 返事をしながら涙がじわりと滲んでくる。


(そうだわ)


 ファビアン公爵と婚約するってことは、アンベール様への想いも諦めなきゃいけないってことなんだ。そりゃあ、元々見込みのない恋だったけど、完全に道がなくなると思うと悲しくなる。


「一体どんな話だったの?」

「えっと……」


 本当はこんなこと、誰にも言わないほうがいいのかもしれない。だけど、一人で抱え込むにはあまりにも大きくて辛いんだもの。私はそっとアンベール様を見上げた。


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