【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
(よかった……よかった…………)


 やっぱりわたし、生きててよかった。いや、死んでよかった? もうどっちでもいいや。だって、今がすごく幸せだから。


(ここまできたら二人はきっと大丈夫。一緒に生きていく方法を探していくに違いないわ)


 というかそうであってほしい! この二人を幸せにしてくれるなにかがあるって信じたい。


 だけど、この状況を覆せるなにかってなんなんだろう?
 単純にわたしとの婚約を解消したところで、グアダルーペ領の問題はなにひとつ解決できないし――。


「……お嬢様、実は今日、私は旦那様から頼み事をされているのです」


 アンセルが耳元でささやく。わたしは思わず振り返った。


「頼み事?」


 一体なんだろう? わたしが首を傾げると、アンセルはわたしの側にひざまずいた。


「ええ。此度の婚約をこちらから破棄することのお詫びと、事の顛末を説明してくるように、と」

「え……?」


 婚約を破棄? しかもわたしから? なにそれ、当事者のわたしが聞いてない。なにも知らないんですけど。
 目を丸くして驚いているわたしに、アンセルは優しく微笑んだ。


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