【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
「そうして月日が経ち、公爵――父は妻を娶ったのですが二人の間には子ができず……私のところに話が回ってきた、というわけです」
「……そう」
状況はわかった。だけど、普通庶子を跡継ぎにするだろうか? 分家の優秀な人間を引き抜くのが妥当な気がするんだけど。
「公爵家に連なる人間のなかで私以上に優秀な人間はおりませんでしたし、公爵の妻――私の義母がたいそう私を気に入ってくださいまして」
「公爵夫人が?」
アンセルが優秀なのは疑いようのない事実だ。どこで学んできたのか、ありとあらゆる知識と技術を身につけているし、礼儀作法だったり領地経営術だったり投資だったり、そんじょそこらの貴族令息よりもすごい人だってわかってる。
だけど、公爵夫人に気に入られるなんて――いや、アンセル人に取り入ることとか、根回し関係が上手だけど! ともすれば憎んだり蔑まれたりしそうなものなのに、いったいどんな手を使ったのやら……。
「いいですか、お嬢様。あなたは私の妻になるんです」
考え込んでいたわたしにアンセルが言う。思わず心臓がドキッと跳ねた。
「……そう」
状況はわかった。だけど、普通庶子を跡継ぎにするだろうか? 分家の優秀な人間を引き抜くのが妥当な気がするんだけど。
「公爵家に連なる人間のなかで私以上に優秀な人間はおりませんでしたし、公爵の妻――私の義母がたいそう私を気に入ってくださいまして」
「公爵夫人が?」
アンセルが優秀なのは疑いようのない事実だ。どこで学んできたのか、ありとあらゆる知識と技術を身につけているし、礼儀作法だったり領地経営術だったり投資だったり、そんじょそこらの貴族令息よりもすごい人だってわかってる。
だけど、公爵夫人に気に入られるなんて――いや、アンセル人に取り入ることとか、根回し関係が上手だけど! ともすれば憎んだり蔑まれたりしそうなものなのに、いったいどんな手を使ったのやら……。
「いいですか、お嬢様。あなたは私の妻になるんです」
考え込んでいたわたしにアンセルが言う。思わず心臓がドキッと跳ねた。