【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
「それで、わたしはなにをすればいいのでしょう?」
「――とりあえず、病棟に行ってみましょうか。怪我をしている人や病気の方が来ていらっしゃいますので、聖女として『手当て』をしていただきたいです」
説明をしながら、リアムは神殿の奥へラブを案内する。
神殿に併設された病棟には毎日たくさんの人がやってきて、医官の治療を受けている。聖女候補たちは彼らの話を聞き『手当て』をする。聖女ならば患者の痛みを緩和することができる――はずだ、というのが国の考えだ。
実際のところ、聖女がなにをできるかもよくわかっていないので、手当たり次第にそれっぽいことを試させている、というのが実情なのだが。
「手当てねぇ? それで痛みがなくなったとしても、気のせいだと思うんですけどねぇ」
ラブはそう言ってほんのりと唇を尖らせている。
「――いや、聖女候補がそんなこと言わんでください」
「でもでも、リアム様もわたしと同じ考えなんでしょう?」
えへへ、と笑いかけられ、リアムは返答に困ってしまう。
実際のところ、聖女候補たちに『手当て』をさせたところで、誰が聖女なのかを特定するのは難しい――少なくともリアムはそう思っている。患者が『よくなった気がする』と言えばそれだけで、聖女候補には『聖女の素養がある』ということになってしまうからだ。
だからこそ、神殿は未だに聖女を確定できていない。もちろん、本当の聖女を見つけられていなかっただけの可能性も大いにあるが……。
「――とりあえず、病棟に行ってみましょうか。怪我をしている人や病気の方が来ていらっしゃいますので、聖女として『手当て』をしていただきたいです」
説明をしながら、リアムは神殿の奥へラブを案内する。
神殿に併設された病棟には毎日たくさんの人がやってきて、医官の治療を受けている。聖女候補たちは彼らの話を聞き『手当て』をする。聖女ならば患者の痛みを緩和することができる――はずだ、というのが国の考えだ。
実際のところ、聖女がなにをできるかもよくわかっていないので、手当たり次第にそれっぽいことを試させている、というのが実情なのだが。
「手当てねぇ? それで痛みがなくなったとしても、気のせいだと思うんですけどねぇ」
ラブはそう言ってほんのりと唇を尖らせている。
「――いや、聖女候補がそんなこと言わんでください」
「でもでも、リアム様もわたしと同じ考えなんでしょう?」
えへへ、と笑いかけられ、リアムは返答に困ってしまう。
実際のところ、聖女候補たちに『手当て』をさせたところで、誰が聖女なのかを特定するのは難しい――少なくともリアムはそう思っている。患者が『よくなった気がする』と言えばそれだけで、聖女候補には『聖女の素養がある』ということになってしまうからだ。
だからこそ、神殿は未だに聖女を確定できていない。もちろん、本当の聖女を見つけられていなかっただけの可能性も大いにあるが……。