The previous night of the world revolution4~I.D.~
だから、もし俺が正気を失って、ルルシーに剣を向けようとしたときは。

その前に、ルリシヤに止めて欲しかった。

と言うか、ルリシヤしか、止める人がいないのだ。

ルルシーは絶対抵抗しないだろうし。

これがもしシュノさんでも、俺を殺すことは絶対に出来ないだろう。

アリューシャも無理なんじゃないかな。アイズレンシアの頼みでもなければ。

アイズだったら、必要とあれば俺を殺すことも、良しとするかもしれない。

なんて、考えたところで…今はシュノさんもアイズもアリューシャもいないのだから、考えても仕方ないのだが。

今ここにいるのは、ルリシヤだけだ。

ルリシヤなら、実力から言っても…俺を殺すことは出来るはず。

「死神モードでないルレイア先輩なら、俺でも殺せるだろうな」

「えぇ。出来るでしょうね」

以前、ルリシヤと最初に会ったときも。

彼は、俺に一方的に怪我を負わせてみせた。

あのときの俺は、死神モードとは程遠かった。

死神モードじゃない俺なんて、ルリシヤにとっては敵じゃないはずだ。

ルシファーだった頃も、帝国騎士団四番隊隊長になれるくらいには、そこそこ強かったけど。

それでも、ルリシヤの敵ではない。

正気を失い、正義なんて下らない大義名分のもとに、愚直な剣を振るうことしか出来なかったあの頃の俺なんて。

「だから、あなたに頼みます。お願い出来ますか?」

「…ルレイア先輩」

ルリシヤは、いつになく真面目な顔で、俺に向き直った。

「俺は、かつてルレイア先輩に命を救われた。最初に会ったあの夜、ルレイア先輩がルルシー先輩に、俺を殺すな、と頼んでくれなかったら…俺は、『青薔薇連合会』に投降したときに、殺されていただろうから」

「…」

あのときのことに、ルリシヤが恩義を感じていてくれるとは。

俺は別に、ルリシヤの命を救ったつもりはなかったんだけどな。

ただ、イケメンだから生きてて欲しかっただけで。

「ルレイア先輩に命を救われた身だ。だから、ルレイア先輩の頼み事なら何でも聞く…つもりだが」

「はい」

「もし俺がルレイア先輩を殺してしまったら、そのときは俺も殺されるな。ルルシー先輩に」

「…」

それは…。

…あるかも。
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