The previous night of the world revolution4~I.D.~
「ルルシーには内緒で…ちょっと頼まれてくれません?」

「…わざわざルルシー先輩を部屋から追い出す時点で、何か話したいことがあるんだろうと思ってたが…。ルレイア先輩が俺に頼み事とは、何だか怖いな。何だ?」

「聞いてくれます?」

「さぁ、内容によるが…」

やだ、って言われちゃ困るな。

ここは是非とも、分かった任せてくれ、と頼もしく言って欲しいものだ。

「…俺を、殺して欲しいんです」

「…」

…さすがルリシヤ。

こんなとんでもないお願いをしているのに、全く動じなかった。

「…それは、どういう意味で?中身を殺せば良いのか?それとも言葉の通り、命を奪えば良いのか」

「言葉の通り命を奪ってください。あなたにしか頼めないんです」

「ふむ…。ルレイア先輩を手にかけるのは、非常に抵抗があるが…。とりあえず、訳を聞こうか」

ルルシーだったら、この時点で「絶対に嫌だ。無理」で話が終わっていただろうな。

無理もない。俺だって立場が逆だったら、同じことを言うだろうから。

だから、ルリシヤにしか頼めないのだ。

「…正直、俺はこれから…シェルドニア王国に着くまで、正気を保っていられる自信がありません」

日に日に、「ルシファー」の方が目覚めているのを感じている。

俺があいつに戻ってしまったら…どうなるのか分からない。

また世界に絶望して自殺するなら、それはそれで仕方ないけど。

でも、何より俺が恐れているのは。

正気を失って…ルシファーに戻ってしまったときに。

「…もし、首謀者の奴らに洗脳されて、奴らの操り人形になってしまったら」

俺は、それが一番怖い。

我を失って…奴らの手駒にされて。

「…この手でルルシーを殺すことになってしまったら…」

人生において、こんな悲劇はないだろう?

自分が最も愛する人を、自分の手にかけて殺すことになったら。

それだけは。それだけは。それだけは絶対に耐えられない。

「…だから、そうなる前に…。俺がもし正気を失って、ルルシーに剣を向けるようなことがあったら…その前にあなたが、俺を殺してください」

「…成程」

嫌だ、とは言わなかった。

無理、とも言わなかった。

「…確かに…それは、俺にしか頼めない話だな」

「…えぇ」

俺を殺すのと俺に殺されるの、どちらが良いかと聞かれたら。

ルルシーは、間違いなく俺に殺されることを選ぶだろう。

考えるまでもなく、そちらを選択するはずだ。

でも、それは俺だって同じだ。

ルルシーは、何があっても俺に銃を向けることはない。

だが俺だって、何があってもルルシーに剣を向けたくはないのだ。

俺にとって救世主であるルルシーを、この手で殺す、なんて…。

俺が生きている限り、そんなことは絶対に、絶対に許せない。
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