The previous night of the world revolution4~I.D.~
この文化の違いよ。

魚…絞めるのはさ、せめて…客が見てないところでやって欲しかったな…。

いや…鮮度抜群なのは良いことだけど…。

すると、血まみれの出刃包丁を持ったおじさん店員が、笑顔で俺に何やら話しかけてきた。

相変わらず言葉は分からないが、多分、「お兄ちゃんは、どれ行っとく?」とか聞いてるんだろうな。

「ルルシー先輩、どの魚にする?」

「…えぇっと…」

耐えろ。頑張れルルシー・エンタルーシア。

魚くらいは良いだろう。自分でも捌くんだし。

目の前で絞められるのはちょっと嫌だけど。

でも魚くらいなら、何とか我慢出来るはず。

俺は意を決して、水槽の中を優雅に泳ぐ魚達を見た。

どれにするか選、

「…」

「…どうした?ルルシー先輩」

「…よく見たら、この…魚…」

…グロい。

とてもグロい。

どの魚も、めちゃくちゃグロい。

深海魚?深海魚なのかこれ?

具体的にどんな魚が泳いでいるかについては、「魚 グロい」で画像検索してくれ。そんな感じだ。

顎がめちゃくちゃ出っ張ってる魚とか。

目玉だけがギョロギョロでかい魚とか。

異常に牙が発達した、獣みたいな魚とか。

普通の姿をした魚もいるけど、そういう魚は、何故か超カラフルだった。

黄緑とかオレンジとか紫とか、熱帯魚か?と思うような蛍光色のお魚ラインナップ。

深海魚か熱帯魚しか選べない鮮魚コーナーって、何?

頼むから。頼むから切り身にして売ってくれないか。

「グロい…グロ過ぎる…」

「まぁ…確かに独特の色と形をしているな。むしろ味が気になる」

ルリシヤ。お前勇気あるよな。

「俺には無理だ…。ルリシヤ、お前…俺後ろ向いてるから、切り身にしてもらってくれ」

「分かった。じゃあそこの…ヘビとトカゲを足して2で割ったような深海魚を切り身にしてもらおう」

深海魚言うな。普通に浅い水深に住んでるかもしれないだろ。

俺は後ろを向いておく。

魚がビチビチ跳ねてる音は、聞こえないことにした。

…数分後。

「ルルシー先輩、切り身だ。切り身になったぞ」

「おー…」

ビニール袋に詰められた魚は、綺麗な白いブロックの切り身になっていた。

宜しい。始めからその状態で売ってくれ。

「よし、ルリシヤ…。野菜。野菜買いに行こう」

「そうだな」

野菜なら万国共通のはずだろう。そうに違いない。

と言うか、そうであってくれ。
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