The previous night of the world revolution4~I.D.~
「良いよ、シュノ。何?」

「このアシミムって人は、国王を暗殺するのが目的なんでしょ?」

「そうだね」

その為に、ルレイアを拉致したんだ。

「なら、この国王を味方につけられないかしら。アシミムの企みを国王に密告して、アシミムを捕らえさせるの。そうしたら、ルレイア達は解放されるでしょ?」

「…成程」

それは…確かに、良い方法だ。

私も一番最初にそう考えた。

「おぉ!良いじゃんそれ!シュー公頭えぇ!告げ口だ告げ口!国王に言ってやろ!」

アリューシャも激しく同意。

言いつける相手が先生から国王に変わっている。

「…私も、それは考えなかった訳じゃない」

「…その顔だと、この方法にも問題があるのね?」

「…残念ながら」

結局のところ、私達が何をするにしても。

博打なのだ。全て。

シュノの言う通り、国王にアシミムの企てを密告すれば。

上手く行けば、アシミムは捕らえられ、ルレイア達も解放される。

上手く行けば、だ。

「…上手く行かない可能性の方が高いと思う」

越えなければならないハードルが多いのだ。その方法は。

「まず、国王がその話を信じなきゃいけない。異国人のマフィアである私達の言葉を、果たして国王が信じるかな?」

「…それは…」

国王がアシミムのことをどう思っているか、にもよる。

国王が常にアシミムを疎ましく思っており、今すぐにでも冤罪を吹っ掛けて失脚させてやりたいとうずうずしているなら…私達の密告を利用して、アシミムを捕らえるだろう。

でも、そうじゃなかったら。

それに、私が何より恐れているのは。

「もし、ルレイアがアシミムのもとにいるのなら…暗殺計画がミレド・トレギアスに露見した時点で、アシミムが口封じの為に、ルレイアを殺してしまうかもしれない」

「…!」

私達が思うように動けないのは、全てそのせいなのだ。

ルレイアを、人質に取られている。

どう動くにしても、大っぴらには出来ない。アシミムに隠れながら、こっそり動くしかない。

そうでなければ、人質にされたルレイアがどんな目に遭わされるか分からない。

「そっか…。ルレ公…人質なんだもんな…」

「…じゃあ、どうすれば良いの…?どうすれば、ルレイアを助けられるの…?」

泣きそうな顔で尋ねるシュノ。

彼女も、もういっぱいいっぱいなのだ。

長期に渡るルレイアの不在。しかも、生死すら不明となれば…。

…私も、気持ちは分かる。

「…ざっと考えて、方法は三つある」

私がそう言うと、シュノはハッと顔を上げた。
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