The previous night of the world revolution4~I.D.~
「その薬物を、継続的に使われ…ルレイア・ティシェリーは完全に死にました。今では、あなた方のことも、『青薔薇連合会』のことも忘れているようです。完全に、アシミムの忠実な部下になっています」

「…」

…俺のことを忘れている、か。

この間会ったときの態度から、覚悟はしていたが…。

…本当に忘れてしまったんだな。

ルレイアに捨てられたような、心にぽっかりと穴が開いたような…そんな気分になった。

「今でも、別の薬物を…もう少し軽めの薬物を、定期的に投与しています」

「…」

…薬漬けじゃないか。そんなの。

頭の中に、過剰に薬を投与されて虚ろな目になったルレイアが思い浮かんだ。

発狂してしまいそうになった。

「…成程…。だが、一つ疑問があるんだが」

ルリシヤが、片手を上げた。

「何です?」

「ルレイア先輩のみならず、俺達は薬物にはそれなりに耐性がある。それにルレイア先輩は、精神的に弱い人間ではない。いくら強い薬を使われたと言っても…そんなに簡単に洗脳されるとは思えないんだが」

「…つかぬことをお聞きしますが。ルレイア・ティシェリーは、昔相当辛い思いをされたのではないですか?」

…は?

「どういうことだ?」

「辛い過去をお持ちではないかと聞いてるんです」

…それは。

俺の脳裏に、あいつに最初に会ったときの虚ろな目を思い出した。

「…そうだな」

辛い過去…なんて軽い言葉では、とても言い表せないほど、凄惨な記憶のはずだ。

「では、そのせいでしょう。ルレイア・ティシェリーには、非常に有効な薬だったはずです」

「…どういう意味だ」

「本人に辛い過去があれば、より強い効力を発揮します。辛い過去を無理矢理思い出させて、恐怖心を煽る。本人が体験した辛い過去を、何倍にも、何十倍にもして再体験させるんです」

「…!」

「そして…その恐怖心がピークに達したタイミングで…恐怖のイメージが突然途切れる。その上で、『助けてくれたのはアシミム』だと刷り込むんです。自分を助けたのはアシミムなのだから、アシミムの為に働かなければならないと」

それが…ルレイアの身に起きたこと。

俺が傍にいない間に。

俺が…守ってやれなかった間に。

俺の、ルレイアに…そんなふざけたことを。
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