The previous night of the world revolution4~I.D.~
俺は、図書館でルリシヤが見せたくれたヘールシュミット家の家系図を思い出した。

「…失礼。他国の貴族ゆえ、詳しくはないのだが…。軽く調べてみたところ、ヘールシュミット家にラトヴィなんて人物はいなかったが?」

「家系図には、嫡子しか書きませんから。ラトヴィは側室の子なんです」

「成程」

ということは、ヘールシュミット家には、家系図に載っていないだけで、本当はもっと大勢隠し子がいる訳だな。

それも全部書けば良いのに。

「側室の子と言えど、アシミムはラトヴィをとても可愛がっていました。それに…前王…二人の父親も、二人を区別なく好いていました」

「…」

「そして、前王は亡くなる数ヶ月程前から、ラトヴィを正式に王太子に定めるつもりで、根回しを始めていました」

王太子…だと?

つまり、王位継承権第一位…次の王に指名されるということだ。

「側室の子が、王太子に?」

「側室と言えど、王の実子であることには変わりありません」

それはそうだが。

「でも、正嫡であるアシミムの方が、王位継承権は元々高いんじゃないのか?」

「シェルドニア王家は、基本的には男系ですから。それに前王も、王位は男児に継がせたいと考えていました」

…そうだったのか。

ルティス帝国のベルガモット王家は、王が男だろうと女だろうと、大して気にしない。

事実、今国を治めているのアルティシア女王は女だし、その前のローゼリア女王も女だった。

そういえばヘールシュミット家の家系図を見たときも、王位を継いでいるのはほぼ例外なく男性だった。

たまに女王もいたけれど、それは本当に稀で、在位期間も短かった。

恐らく、王位を継ぐべき男児がまだ幼かったとかで、臨時の王として玉座についたのだろう。

「…大体話が読めたな。つまり、前王は妾の子であるラトヴィに王位を継がせようとしたが、それで割を食うミレドが前王を暗殺でもして殺し、ついでに目障りなラトヴィを人質として幽閉して、まんまと王位を奪ったと。そういうことか?」

ルリシヤの推測は、実に俗っぽくて…馬鹿げたものだった。

しかし。

「大正解です」

…外れて欲しい予測ほど、よく当たると言うが。

あれは、本当らしいな。
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