The previous night of the world revolution4~I.D.~
しかし、ラトヴィはシラノの母を死なせるだけでは気が済みませんでした。

シラノが14歳になった頃から、あの男は、今度はシラノを狙うようになったのです。

まだ14歳だったシラノを、性の対象として見るなど…吐き気がします。

最初の頃は、シラノはそのことを私に黙っていました。

私に、余計な心配をかけたくなかったのだと思います。

だから、私も何も知りませんでした。

ラトヴィが女奴隷に手を出していることすら、知りませんでした。

その事実を知ったのは、シラノが15歳になった頃です。

彼女はある日、涙ながらに私に打ち明けました。

主人であるラトヴィに、性的な嫌がらせを受けている、と。

そのときは、シラノも詳しくは話しませんでした。

後でラトヴィの別の奴隷に話を聞いてみたところ、シラノの身体に執拗に触ったり、卑猥な言葉を投げ掛けていたらしい。

なんとも卑劣な男です。

それなのに、私に心配をかけまいと、シラノは微笑みながら「大丈夫」と言いました。

「私は平気だから、心配しないで」と。

口ではそう言いながら、私に相談しているのだから…きっと、相当追い詰められていたのだと思います。

シラノの身を心配した私は、アシミムに相談し、アシミムの方からラトヴィを止めてくれるように頼みました。

奴隷の私が何を言っても、ラトヴィが鼻で笑うことは分かっていましたから。

しかし、アシミムは自分の弟がそんな卑劣なことをしている事実を認めませんでした。

「私の弟を侮辱するな」とさえ言いました。

アシミムがここまで怒るところを見たのは初めてで、怖くなった私は、それ以上何も言えませんでした。

私が何も言えなかったばかりに、ラトヴィはシラノを煩わせ続けました。

いよいよ嫌がらせが酷くなってきたとき、シラノは泣きながら私に訴えました。

もう辛い、耐えられない、と。

このままでは、他の皆みたいに私もいずれレイプされてしまう、と。

そのとき初めて、私はラトヴィが常習的に女奴隷に手を出していることを知ったのです。

あのシラノが泣きながら私に訴えるなんて、ただ事ではないと思いました。

私は改めて、アシミムにラトヴィを止めてくれるよう頼みに行きました。

しかし、アシミムは私の話を聞こうともしませんでした。

「その話はもう良い」と遮り、ルシードを連れて買い物に出掛けてしまいました。

私には、もうどうすることも出来ませんでした。

そして、私が何も出来ないでいるうちに…。

最悪の事態が起きてしまったのです。
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