The previous night of the world revolution4~I.D.~
シラノは、何も言ってはくれませんでした。

私が何を聞いても、「大丈夫」としか言ってくれませんでした。

でも、その目が虚ろに濁っていることに…気づいていない訳ではありませんでした。

そのまま、シラノは「大丈夫」としか言わないまま…。

ある日、自室で首を吊って死んでいました。

遺体を最初に見つけたのは、私でした。

私はシラノの遺体を見て、ショックでそのまま意識を失ってしまいました。

分かるでしょうか。あのときの私のショックが、どれほどのものだったか。

自分の半身を引き剥がされるような気分でした。

故郷から遠く離れたこの国で、私を支えてくれたのはシラノと、シラノの母親でした。

その二人を、私は失ってしまったのです。

何より…自分がもっとも愛していた大事な親友を…失ってしまいました。

この苦しみが、悲しみがどれほどか、あなた方には分かるでしょうか。

私はあの日、一人ぼっちになってしまったのです。
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