The previous night of the world revolution4~I.D.~
私が目を覚ましたときには、既にシラノは埋葬されていました。

遺書はなく、シラノの自殺の原因は分かりませんでした。

しかし、遺書は残されていました。

私はそのことを、シラノが自殺して一ヶ月ほどたってから、初めて知ったのです。

ラトヴィの奴隷の一人が、私にこっそり教えてくれました。

「あなただけは、知っておいた方が良い」と。

シラノは、ちゃんと遺書を残していたのです。

シラノの遺書には、自殺に至る理由が書かれていたそうです。

一年前からラトヴィに性的な嫌がらせを受けていたこと。

ついには、四ヶ月前からレイプされるようになったこと。

自分だけではなく、自分の母親も、他の女奴隷も同じ目に遭っていたこと。

そのせいで死んでしまった子もいること…。

シラノは、自分の死でそれを告発しようとしました。

そして、私に対しても…。

「もう傍にいてあげられない。ごめんね」と書いてあったそうです。

シラノがどんな気持ちでそれを書いたのかと思うと、私は気が狂いそうになりました。

私は、その遺書が欲しいと言いました。

その遺書を、アシミムに見せようと思ったのです。

シラノは、遺書を残すことで、これ以上ラトヴィに傷つけられる者がいないよう、自分を最後の犠牲者にしようとしたのです。

だから、私がその遺志を継ごうと思ったのです。

しかし、彼女は「遺書はもうない」と言いました。

何故ないのか?

ラトヴィが、遺書を燃やしてしまったのです。

自分のやっていたことが露見するのを恐れて、遺書をなかったものにしてしまった。

彼女は遺書を最初に見つけたので、こっそり中を読んでいたけれど。

ラトヴィは他の者に遺書を読ませることなく、燃やしてしまったそうです。

それどころか、シラノが自殺した事実さえ、隠蔽されてしまいました。

シラノはあくまで、「事故死」ということで処理されました。

その根回しに、アシミムも手を貸していたそうです。

アシミムは私に何も言いませんでした。

遺書の事実を教えてくれたラトヴィの奴隷は、自分が遺書を読んだことがいつバレるかと、恐れていました。

もし遺書を読んでしまったことがラトヴィにバレたら、どうされるか分からない。

けれどシラノの親友であったあなただけは、真実を知っておく権利があると思った、と。

彼女はその後、遺書を読んだことがバレたのか、それとも別の件でラトヴィの怒りを買ったのか、奴隷市場に売られ、ヘールシュミット邸からいなくなりました。

彼女が今何処で、何をしているのかは知りません。

大事なのは、私が遺書の事実を知った、ということです。

その遺書をラトヴィが隠蔽し、シラノの死までアシミムが隠蔽し、しかもそのことを私に黙っていたことを…知ってしまった。

私はその瞬間、復讐の鬼になりました。
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