The previous night of the world revolution4~I.D.~
「っ…!な、何をするんですの!?」

頭から紅茶をぼたぼた垂らしながら、慌てて椅子から立ち上がるアシミムの姿は。

優雅とはかけ離れた滑稽ぶりで、俺は笑いが止まらなくなった。

「あっはは!ダッサ!ついでに縦ロール千切ってやった方が良いですかね~。あ~草生える~。写真撮っとこ」

ぱしゃり、と記念写真を一枚。

これで、ルティス帝国に帰国してからも好きなときに楽しめるな。

これ、アシミムの遺影にしようぜ。イエイ。

すると。

「お前な…写真に撮るな。ってか小学生みたいな煽りを入れるな」

華弦の手引きで、アシミムの部屋のクローゼットに隠れていたルルシーとルリシヤが、揃って出てきた。

ルルシーは呆れていたが、ルリシヤは。

「何だルレイア先輩。つまらないな。俺はもっとこう…ケーキに顔面ダイブ!とかやるのかと思って、パーティー用のなんちゃってケーキ持ってきたのに」

さっ、となんちゃってケーキを出すルリシヤである。

なんて準備の良い。

「俺もそれは考えたんですけど、折角のゲロ顔がクリームで見えなくなったら、楽しみ半減かと思って」

「成程、確かに」

「…小学生か?お前らは」

ルルシーは、呆れを通り越してちょっと引いていた。

折角のドッキリ大成功~♪なんだから、楽しまないと。なぁ?

落とし穴でも掘ろうかと、本気で考えていたくらいだぞ。

すると。

呆然としていたルシードが、慌ててアシミムの前に立ち塞がった。

「主よ、お下がりください」

「どういうことですの?ルシファーの洗脳が…」

「糞みたいな名前で呼ぶのはやめてもらえませんかね。この糞縦ロール女」

さて、ここからは本性剥き出しで行こう。

忌々しい「ルシファー」ではなく。

ルレイア・ティシェリーとして。

「ふざけた洗脳術で、俺とルルシーの愛の絆を…俺とルルシーの愛の絆を!断ち切ろうとしたその罪、購ってもらいましょうか」

「…何で二回言ったんだ?」

「大事なことだからだよ、ルルシー先輩」

後ろで二人がこそこそ話していた。ちょっとちょっと。今良いところだから。

かなり格好良いところだから。ちゃんと見ててね。

「やはり…洗脳が解けていたのか。いつからだ?」

ルシードが、射殺さんばかりの冷たい眼光を向けてきた。

少しも怖くねぇよ。

「さぁいつからでしょうね。答える義理はありません。それより…そこどいてもらえませんか。そのブス、ぶん殴って頭を丸刈りにしないと、気が済まないんですよ」

その縦ロールさえなくなれば、少しは見映えも良くなるだろう。

しかし。

「断る」

当然、ルシードはアシミムの味方らしい。

全く、何を考えているのだか知らないが…。

「…あなた、自分が何してるか、分かってるんですか?」

呆れて物が言えない、とはこのことだ。

洗脳が解けてからというもの、ルシードに対して、ずっと思っていたことがある。

「…その女、そんなに守るべき価値のある人間なんですか?」

俺も、人のことは言えないのかもしれないけど。

その女、俺に負けず劣らずのクズだぞ?
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