The previous night of the world revolution4~I.D.~
「…まぁ、あなたがそれでもアシミムを庇いたいってんなら、良いですよ。好きにすれば」

俺は、すらりと剣を抜いた。

「…あなたごと叩き斬るだけです」

俺とルルシーの愛を邪魔してくれたお礼は、たっぷりさせてもらう。

これで怖じ気づいてくれれば儲けものなのだが、ルシードは全く動じることなく、向こうも刀を抜いた。

…この野郎。

そっちがその気なら、俺も…と。

一歩踏み出した、そのときだった。

「…っ!?」

アシミムの部屋の中に、耳障りな音響波が鳴り響いた。

俺の中からルレイアを殺した、あの音響波だった。

思わず膝をつきそうになった俺に、ルシードが迫る。

「っ、ルレイア!」

ルルシーが、咄嗟に俺を庇おうとした。

しかし。

もう二度と…俺は自分の救世主を忘れたりしない。

忘れてたまるものか。

そう思っているのに、まだ洗脳の効果が残っているらしく…俺は一瞬。愚かにも。

自分の救世主はアシミムだったはずでは、なんて馬鹿げたことを考えてしまった。

「…この…愚か者がっ!!」

俺は自分の手のひらに、ずぶりと剣を突き立てた。

「!?」

ルルシーもルシードもアシミムも、ぎょっとしていた。

動じてないのはルリシヤだけだ。

強烈な痛みと共に、冷静な思考を取り戻した。

そうだ、何がアシミムだ。ふざけんな。

「忘れたか、ルレイア・ティシェリー…。貴様を地獄から救い出した救世主の名を」

俺は、自分で自分にそう言い聞かせた。

思い出せ。

「お前の救世主は…こんな化粧臭い、しかも紅茶臭い、良い歳して金髪縦ロールで、今時少女漫画でもいないような、ですわ系なんちゃってゆるふわお嬢様(笑)だったのか…。違うだろうが」

お前の救世主は。

「俺の救世主は、もっと格好良くて、男らしい良い匂いがして、あと寝顔が天使みたいに可愛くて、爽やかでイケメンで格好良くて素敵な、愛しいルルシーだろうが!」

それを忘れるなど、言語道断。

美しいダイヤモンドを、砂庭に落ちてる石ころと間違えるほど耄碌したか、俺は。

「俺のルルシーはな…お前みたいなブスじゃないんだよ!ふざけんな!」

…言ってやったぞ。

よし、これでもう忘れない。大丈夫だ。

刻み込んだから。魂にな。
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