The previous night of the world revolution4~I.D.~
「…本気か?」

「本気ですし、正気ですよ」

俺だって、並々ならぬ覚悟がなければこんなことは言い出さない。

言い出せないよ。

ルルシーがいなかったら、思い付きもしなかっただろうな。

「でも…あの場所は、お前にとって…」

「そうですね…。諸悪の根元ですけど…」

俺という人間の闇の源泉は、あの場所にあると言っても良い。

俺にとっては、思い出すだけでもおぞましい場所。

だけど、だからこそ。

「あの場所に行かないことには、過去を清算出来ないと思ったもので」

「…余計に傷つくだけじゃないのか?」

その可能性はある。

余計嫌なことを思い出して、辛い思いをするだけかもしれない。

でも。

「ルルシーが傍にいてくれるから、大丈夫です」

「…ルレイア…」

「あの場所に行かないと…俺はもう、前に進めない気がするんです」

「…無理に進むことはないだろ。立ち止まってたって…」

ルルシーは許してくれるだろうね。

俺が立ち止まってしまったら、一緒に立ち止まってくれる人だよ。あなたは。

立場が逆なら、俺だってそうするだろうから。

前を向いて生きることだけが、人間の美徳ではない。

立ち向かうことが出来たら、それは美しいかもしれないが、それが出来ないからって無価値な訳ではない。

立ち止まって蹲っても、逃げ出しても良い。

一度でも、死ぬほどの苦痛を味わったことのある人間なら、その意味が分かるだろう。

だから俺は、別に前を向いて生きたい訳じゃない。

光の方に足を踏み出すつもりは、全くない。

そうじゃなくて、俺はただ。

自分が今生きていることを、確認したいだけなのだ。

「…分かったよ。そこまで言うなら…行ってみよう」

「ありがとう、ルルシー」

ルルシーが来てくれるなら、何も恐れる必要なんてないな。
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