The previous night of the world revolution4~I.D.~
「どうしたルルシー先輩。そんなに驚いて…。サービスショットか?」

「驚くに決まってるだろ…。何処から生えたんだお前は」

入ってくるのは良いけどさ。

ちゃんとインターホン押して、俺が出迎えて、お邪魔しまーすと言って入ってこい。

自分ちじゃないんだからよ。

しかし、ルリシヤはお構い無し。

「蕎麦作るからキッチン借りるぞ」

「あ…?もう作るのか?」

外、まだ明るいぞ?

ルレイア達もまだ来てないのに、今から蕎麦って…。

「よいしょっと…」

「!?」

ルリシヤは、キッチンのテーブルの上に、大きなこね鉢と、のし板、こま板を置いた。

更に、袋一杯の粉。

お、お前まさか。

「…何やろうとしてんの?お前」

「ん?打つんだ。蕎麦をな」

やはりか。

年越し蕎麦を自分で打つとは。本格的過ぎるぞ。

スーパー行けよ。出汁、蕎麦、海老天のセットで300円もあれば買えるだろ。

「大丈夫だルルシー先輩。初めてじゃないから。『セント・ニュクス』にいた頃は、よくチビ達に手打ち蕎麦を振る舞ったものだ」

「ま、マジかよ…」

「今年はうどん派がいなかったから、打つのは蕎麦だけで済むしな」

うどん派がいたら、うどんも手打ちで作るつもりでいたのかよ。

ルリシヤは慣れた手つきで、水を入れながら粉をこね始めた。

正にプロの手つき。

お前な…。多才なのは良いけど…。

「…俺も、何か手伝おうか?」

勝手に押し掛けられた身ではあるものの、目の前で忙しく動いてるルリシヤを見たら、何もしない訳にはいかない。

「ありがとう。なら、持ってきた鰹節と昆布と焼きあごで、出汁取ってくれないか」

「そこからやるのかよ…」

粉末スープあるよ。うち。

良いよ分かったよ。出汁取るよ。

こんな本気的に年越し蕎麦を作ったのは、今年が初めてだよ。
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