The previous night of the world revolution4~I.D.~
「…ん…?」

俺の口の中は、大パニックだった。

俺はお雑煮というものを、しょっぱいものだと思っていた。

少なくとも、甘いものだとは思っていなかった。

しかしそのお雑煮は、甘かった。

お雑煮って言うか…甘さ的には、お汁粉…?

不味くはない。でもなんか甘い。やたら甘い。

甘いお粥みたいな味。

「フューニャこれ…何なの?」

俺、お雑煮なんてまともに食べたことないけど。

これがお雑煮ではないことくらいは分かる。

「何って…お雑煮でしょう?」

「いや…お雑煮ではない気が…」

「あら…違うんですか?雑に煮る、と書くので…てっきり向こうでお正月に食べていたものが、ルティス帝国で言うお雑煮なんだわと思ってたんですが…」

…あ、そういうことか。

これ、箱庭帝国風のお雑煮なんだ。

それで納得が行ったよ。

「成程…。箱庭帝国では、お正月にこれ食べてたんだ」

「はい。食材がこちらのものなので、多少ルティス帝国風になってますけど」

へぇ…。

箱庭帝国の料理って、あんまり美味しくないと思ってたけど…これは意外と行ける。

さっきも言ったが、不味くはないのだ。

お雑煮と思うと甘過ぎるだけで、デザートだと思ったら良い感じの甘さ。

「箱庭帝国の元旦は、甘いものから始まるんだな」

「…お砂糖が貴重品でしたからね。お正月くらいは、甘いものを食べたかったんです。私も故郷にいたときは、お正月に食べるこれが大好きでした」

…そうだったのか。

なんか…ちょっと、悪いことを聞いてしまったな。

箱庭帝国だと、満足に砂糖もなかったんだろうし…。

「そうか…。美味しいな。甘くて」

「えぇ」

良いじゃないか。甘いお雑煮があったって。

家庭によって様々なんだから。

クランチェスカ家では、これをお雑煮としよう。
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