はわわって言えばなんとかなると思ってた~拗らせ次期宰相からの執愛はウザい!~
 きゅるんきゅるんとした瞳で見つめてやると、くくくっと暫く堪えきれない笑いを存分に零したリチャードが私の机の近くまで歩いてきてドキリとする。
「ほとんどの使用人は侯爵家の紹介状を持って新しい職場へ、もちろん希望者はウチで雇うと告げたし何人かはもう働きに来てくれているよ。他の職場を選んだ使用人たちは、家族と住んでいる家が遠いからという理由であってトレイシーが嫌だったわけじゃない」
 まるで私を安心させるようにそんな解説をつけてされたその内容に思わず安堵の息を吐く。そんな私の顔を何故か心配そうにリチャードが覗き込んだ。
 
「な、なによ」
「……乳母と執事は再就職を希望しなかった」
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