嘘八百

「カンダユキ」

 目が合った。どこかで見た顔だと思った。

「フードファイターは引退ですか」

 その言葉に漸くピンときた。

「エビスビールのひと」
「ビールは関係ないな」
「岬だっけ。名前」

 現金が渡され、受け取ってレシートを返す。雪は少ない引き出しの隅に置かれた名前を掘り当てた。

「京橋さん、レジありがと」

 仕事を終えた鈴炉が掌を見せながらレジへ来た。岬が鈴炉を見ると、自然と視線が合った。

「京橋?」

 雪を指差す。指差すな、と雪はその指を押し返した。

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