嘘八百

 怒って、早くどこかへ行ってくれと思った。

 雪の祈りとは反対に、岬はからりと笑った。

「そうか。じゃあまた誘う」
「いや、あの」
「仕事中に悪かった」

 じゃあ、と岬が背中を向けて去っていく。
 雪はその背中に「もう誘わないでください」と声をかけることが出来なかった。

 店に戻り、溜まったオーダーを一気にこなしていく。声を掛けたそうな鈴炉を余所に、雪の頭の中は岬の笑顔でいっぱいだった。

 あんな渇いた。
 いつ死んでも良い、みたいな笑顔。

 知らない、と顔を背けてしまえば楽なのに。

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