嘘八百

 そうはいかないから、こんな人生を歩んでいる。

「おう、今月分しっかり」

 喫茶店のバックヤードで札を弾く音が止み、雪は鞄を掴んだ。

「返済期限守って偉いなあ自分」
「それと引き換えのバイト先なんで」
「まあギャンブルで借金返した奴なんておらんしな」

 南国の花が描かれた黒い柄シャツを着ている高輪(たかなわ)が札を封筒に入れて鞄へしまう。

「じゃあまた来月」

 ぴらぴらと札を振って裏口を出ていく。

「中抜きしないでくださいね」

 その背中に呼びかけた。返事は無く、扉は閉まった。


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