嘘八百

 店を出てすぐ岬は立ち止まり、雪を見た。同時に五百円玉も目に入る。

「ひとつくらい、本当のことを言ったらどうだ」

 この世は嘘で溢れている。

 そう思ったのはいつからだったか。思い出すのも難しいほど、記憶は遠かった。
 言ったところで、嘘か本当かなんて、分からないのに。

「今年、27になった」

 雪の言葉に目をぱちくりさせて、考えるように少し宙を見た。

「じゃあ二つ下だ」

 嬉しそうにはにかんだ顔に、毒気を抜かれる。

 雪は溜息を深く吐いた。

「信じられない……」



< 30 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop