嘘八百
立場と立ち位置

 まっすぐ雪を見て、口を開く。どこか遣る瀬のない声で。

「弱者の立場になって考えてみてください」
「じゃあ断れる強者は悪者かよ」

 ちゃぷん、とペットボトルの中身が揺れた。雪も雪で、嘲るような顔をしている。

「そうじゃなくて。京橋さんは、大切なひとが嫌な目に遭っても、断れないあんたが悪いって言うんですか」

 悲しい顔をした尾野に気付き、雪はペットボトルを置いた。

 頭に浮かんだのは、玲香でも他の知人でもなく、何故か岬だった。いつ死んでも良いような顔をしていた男のこと。

「……言わないな、うん」

 熱くなっていた。尾野の隣の椅子へ座る。

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