嘘八百

 その言葉に尾野の眼差しは柔らかくなっていた。

「京橋さんに人の心があって良かったです」
「まあでも、尾野ちゃんがわたしのこと少しキライでも、わたしはガンガン自分の意見を言える尾野ちゃんのことキライじゃない」

 にこ、と美しい笑みを見せて雪は言った。
 ひく、と顔を引き攣らせる尾野。

「思ってもないことを……」
「それに、どちらかと言えば尾野ちゃんは断れる人間側でしょ」

 話は堂々巡りだ。



 弱い立場ではないよな、と岬を見る。
 端正な顔立ちに、誰もが一度は聞いたことがあるであろう大企業勤めに、玲香によればハイスペック。
 どちらかと言えば、断ることができる人間側だろう。

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