嘘八百

 久々に見たと思えば、物言いたげな。
 というか、前に見た時に戻っている気がする。

「水です」

 戻ってきた鈴炉に代わり、コックコートのまま雪は岬の卓へ水を届けた。
 顔が上がり、視線が絡む。

「え、なに?」
「嫌われたかと」
「どうして」
「連絡は返ってこないし、顔を見なかったから」
「連絡?」

 連絡先なんて知っていたか、と雪はポケットからスマホを取り出す。
 メッセージアプリの中から岬の名前を探す。

「追加してなかった」

 追加していないとメッセージを受け取れない設定になっている。

< 65 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop