一輪のバラード

合コンがお開きになったのは21時頃。

タクシーを3台呼び、男性陣がそれぞれわたしたちを送ってくれることになったのだが、ペアは言うまでもない。

桃華は最後の最後まで光平さんをガッチリとホールドしていた。

「今日はありがとうございました。」
「ご馳走でした。」

そう言って、それぞれタクシーに乗り込む。

わたしは樋井さんとタクシーに乗ると、運転席さんに住所を伝え、タクシーは走り出した。

「今日はありがとうございました。あんな立派な和食屋さんでご馳走になってしまって。」
「いえ、こちらこそ楽しい時間をありがとうございました。」
「わたしも楽しかったです。」
「桃華さんは、最後まで颯を放しませんでしたね。」
「そうですね、何か迷惑そうな表情をしてたような気がするので、光平さんには申し訳なかった。」

わたしがそう言うと、樋井さんは笑い、「颯なら大丈夫ですよ。女性の相手なら、慣れてるはずですから。」と言った。

「光平さん、絶対モテますもんね。」
「あの顔で脳外科医ですからね。看護士さんたちからも誘われることが多いみたいですよ。」
「でしょうね。」

そんな話をしていると、突然樋井さんが「ひかりさん。」とわたしの名を呼んだ。

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