一輪のバラード

「は、はい。」

さっきの和やかな空気とは違い、樋井さんは真剣な表情をしていた。

「突然ですが、、、ひかりさん、僕の秘書になっていただけませんか?」
「えっ?!」

あまりにも予想外の樋井さんの言葉にわたしは驚き、思考が追いつかず混乱している状態だった。

秘書?秘書って何だっけ?

あ、社長さんのそばで仕事する人のことだっけ?

え?わたしが、樋井さんの秘書?!

「土日祝日はお休み、残業はなし。これなら、マルちゃんと過ごせる時間も増えますよね?給料は、今いくら貰っているのかは分かりませんが、その倍は出します。」
「えっ?!今の倍ですか?!」

今の仕事は休日出勤はあるし、残業だってある日もある。
それなのに、安月給。

土日祝日が休みで残業なしなら、確かにマルとの時間は増えるし、何より給料が今の倍ってゆうのが、、、

「今すぐに返事をいただかなくても大丈夫です。考えてみていただけませんか?」
「分かりました。」

そして、わたしの住むアパート前に着くと、樋井さんは「良いお返事お待ちしてます。おやすみなさい。」と言い、タクシーで帰って行った。

樋井さんの秘書、、、

わたしはそのことを考えながら、アパートの階段を上って行った。

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