初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
バタン…


扉が閉まり10秒…
晶人さんが組んでいた足を投げ出した。



「はーッ、めんどくせぇ、何だよ旅行って」

その吐き捨てる様な言い方…本当に面倒くさいみたいですね。
まぁ言い方はあれですが、そのお気持ちはよく分かります。


「麻里亜の親父さんが言い出したのか?」

「いえ、平久保社長からだとお聞きしました」

「ったく親父は……。麻里亜は旅行、嫌そうだな。…フッ、まぁそうだろうな、昔から結婚に乗り気じゃないしな」

「それは晶人さんも、ですよね」
顔に張り付けた微妙な笑顔で応える。


「…そりゃあ遊びたい盛りの時に許嫁がいるから女を作るなとか言われてさ、迷惑でしかねぇわ」

でも、いらっしゃいますよね、お付き合いされている女性。

…ま、それはどうでもいいですけど、迷惑なのはお互い様です。


「で、どうすんの?旅行」

「面倒でしたら忙しいとか理由をつけてお断り頂いても」

ていうか、断って下さい!
あなたの父親が言い出したのですから!


「はー…そうもいかねぇんだよ、親父は一度言い出すとうるせぇからな。……そうだ、じゃあこうしないか。旅行には行くけど、別行動だ。麻里亜は一人で、俺はユキエと。もちろん泊まる部屋もな。…どうする?」

ニヤニヤと意地の悪い顔で私に問うから、素直に答える。

「それで晶人さんの体裁が整うのなら、私は構いません」

そちらからそう指定されるのは癪ですが、私もあなたと同行したくありませんので、全くの別行動は非常にありがたいです。


しかし、この私の返答の何が気に入らないのか分からないが、晶人さんの表情からニヤニヤが消えた。

「…フン、本当に麻里亜は自分がないんだな」

「いえ、自分を『出せ』ないだけです、高校生の時から」
また張り付けた微笑で精一杯のイヤミを返す。

「…あぁ、そういうことか」

「えぇ。出したところで受け入れてもらえないですから」

「フッ、少しは自分があるんだな」

「えぇ、出せないだけで」

それはあなたも解っているだろうに。
…つくづく嫌な人だ。



「…じゃあそういうことで。日程とかこっちで決めたら追って連絡する」

「わかりました、よろしくお願いします。それでは失礼いたします」

また丁寧に一礼して、ヒラクボファーマの応接室を出た。

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