初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~

「どうぞ」

ライチリキュールを使ったフルーティなカクテルは、栗原さんのイメージに俺の恋心をミックスした、俺のオリジナル。

その名も『mariage(マリアージュ)』

『マリアージュ』の本来の意味である〝最高の組み合わせ〞に栗原さんと俺を、〝結婚〞に俺の希望を乗せて、更に栗原さんの名前の〝麻里亜〞もかけてみた。

って…ちょっとキザだったかな、ハハ。


「いただきます。……ん!美味しい!…これ、ライチのお酒ですよね。んー…フルーティな甘さと柚子の酸味…それに香りが重なりあっていて…本当に美味しいです!私、今まで飲んできたカクテルの中でこれが一番好きだなぁ」

「それはよかった。喜んでもらえて嬉しいな」

俺が、栗原さんにしか作れない、特別なカクテルだからね。


「何ていうカクテルですか?」

「mariage(マリアージュ)」

「マリアージュ…フランス語ですよね。素敵な名前……でもカクテルでは初めて聞きました」

「俺が今初めて作ったオリジナルだからね、まだ誰も知らないよ」

「えっ、そうなんですか!……そんな貴重な初めてを、通りすがりの旅行者の私がいただいてしまってよかったんですか?」

「えぇ、麻里亜さんに飲んでほしかったからね」

「あっ…ありがとうございます…」

「いえ、こんなに喜んでもらえて、お礼を言うのは俺の方」


すると栗原さんが、ふっ、と笑った。

「…本当にいいことがあったなぁ…」

「何かあったんですか?」

「今日、彩雲を見たんです。すごくはっきりした鮮やかな虹色で、大きくてキレイな彩雲だったの。だからいいことがあるといいなぁ、って思ってたから」

「麻里亜さんも見てたんだ。実は俺も見たんだ。俺もいいことないかなー、って思ったよ。それで?麻里亜さんのいいことって?」


「美味しいカクテルをいただけたこともだけど……マスターさんと出会えて、こうしてお話しできたから」

「俺?」

「実は……マスターさん、その徳永くんに似てるんです。見た目も声も。…あ、眼鏡はかけてませんでしたし、髪ももう少し短めでしたけどね。……昔のお話をしていたら、あの頃の恋心を思い出して…ふふっ、マスターさんが優しい事を言ってくれるのが徳永くんに言われてるみたいで…ドキドキするのが嬉しくて。だから……望まない結婚をする前に、大事な想い出と…あの頃のときめきをもう一度思い出せてよかったな、って」

ふふ、って大人の顔で微笑みながら『mariage』のグラスに口をつける。

「はぁ…おいし…」

上唇が濡れて、「ふぅ…」って息を漏らす口元がすごく色っぽくてドクリと胸がなる。

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