初恋成就は虹色雲のキセキ ~白馬の騎士は鳥かごの中の小鳥を溺愛する~
会場が少しざわつく中、マイクを持った湯島くんが話し始めた。
「皆様、いきなりこのような登場で驚かせてしまい申し訳ございません。現在、栗原社長の第二秘書を務めております、湯島 実と申します」
そう挨拶をすると、一呼吸して、また話し出した。
「…実は私、元は女性で、湯島 実里(みのり)という名前でした」
会場にいる湯島くんを知る人達から「えぇーっ!?」という声が上がる。
確かに彼は中性的できれいな顔立ちではあるが、まさか女性だったなんて…
私もにわかには信じられなかった。
「私は、まだ女性として過ごしていた時にヒラクボファーマに入社しました。そして入社して…すぐの新人研修の時…」
ぐっと唇を噛んだ湯島くんだったが、その肩を優しく擦るお父さんに小さく頷くと、言葉を続けた。
「そこにいる…平久保社長に……性的暴行を受けました」
それでまたざわついたホール内をお父さんがなだめ、湯島くんの話を促した。
「最初の暴行の際に写真を撮られ、それを脅しに使われて…私は都合良く利用され……挙句の果てに…栗原さんの女になれと言われ…ヒラクボファーマを解雇されました…」
お父さんは、嗚咽を漏らしながら話す彼の肩を擦りながら「よく話してくれたね。後は私が代わるよ」と言ったのだけど、湯島くんは「いえ、私が全てお話しします…話させて下さい」ときっぱりと断った。
その湯島くんの態度にお父さんが深く頷くと、彼はまた正面を向き、息を整えると話し出した。
「そして解雇された私はすぐに栗原社長に引き合わされました。初めてお会いした時に、栗原社長は、私の事を愛人にするつもりはない、平久保社長には適当に言っておくから自分に関わらなくていい、と仰いました。…それを聞いて、栗原社長が信頼できる方だと思った私は、それまで平久保社長にされてきた事の全てをお話ししました。そして……私がトランスジェンダーであることも。…すると栗原社長はその日から私を男性として扱って下さいました。……嬉しかったです。親ですら私を認めようとしてくれなかったので…」
会場にいる全員が、湯島くんの話を黙って聞いている。
「…私は男性として生きる事を決意し、それをも栗原社長は応援して下さいました。そして…男としての生活に慣れてきたところで、お世話になった栗原社長に恩返しがしたくて、何かお役に立てることはないかと思い、私からお願いし、栗原社長の秘書として働かせて貰ったのです」