好きになんか、ならなきゃよかった。
偽りの天使
ふたりにしか分からない世界。

初めて見たときから感じていた。
目に見えないくらい透明で、先が見えないほど高く反り立っている壁。

そして、誰も立ち入れないようなその中で互いをかばい合うように共存しているふたり。

ほかにも人がいるはずなのにお互いがお互いのことしか見えていないような、ふたりの空間だけこの世界から切り離されているような、そんな雰囲気。


「もうやめたのかと思ってた」
「また最近戻ってきたんだよ
 そっちこそ一緒にやめたのに戻ってきてたんだ」
「まあそうね」

感嘆符のない簡素な会話。

それをただ静かに、ゆっくりと紡いでいく様子はふたり以外にはわからない世界のよう。
< 5 / 11 >

この作品をシェア

pagetop