時が経っても君を忘れない恋がしたい
鞄から日記帳を取り出して、ペラペラと今日のページを開き“放課後に数学の課題プリント提出”と書き込む。


私は中学二年生の夏に、信号無視をしてきた車を咄嗟に避けた際に、頭を強く地面に打ちつけた。

一命を取り留めたもののその時に記憶をつかさどる大事な場所である海馬を少しだけ傷つけてしまったらしく、たまに記憶の一部が抜けてしまうという後遺症が残った。

それから日記帳にその日あったことを記録することで、日常生活に支障をきたさないように自分なりに気を遣っているつもりなのだが、さっきまでしていたことを忘れるなんてこともたまに起きるため、かなりマメにメモをしておかないといけなかったりもする。

よく言えば、物忘れが多くなってしまったという感じだ。


この後遺症を物理的に治す方法はないみたいで、私の精神的ストレスで悪くなったりするかもしれないし、いつかふと治っていたりするかもしれないらしくはっきりとしたことはわかっていない。

ただ今のところ日常に困るほどの影響はないため、今はそっとしておこうと病院の先生と親と話して決めたのだ。





「…ん?あれ、私、何してたんだっけ?」


ハッと腕に突っ伏していた顔を上げると、窓の外にはグラデーションになっている夕焼け空が広がっていた。


「…あ、そうだ。彩美とバイバイして、教室で課題プリントやって提出しにいって、疲れてそのまま寝たんだっけ…」


なんとか手繰り寄せて思い出した記憶に、そうだったと頷く。
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