訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
笑顔なのに目は笑っていない。先程までのでれでれ甘々はどこへやら、圧のある笑顔に永翔は黙りこくる。
この姉弟らしいやり取りが陽鞠には新鮮だった。そもそもこんなにタジタジな永翔は見たことがない。
「改めて陽鞠さん、永翔から色々聞いたわ。大変だったみたいね」
「あ、えっと……」
「心配しなくても大丈夫よ。もう陽鞠さんは六条の身内だから何かあれば六条を敵に回すのと同じだとはっきり言ったから」
そう言われてどういうことなのかわからず戸惑っていると、永翔が言った。
「烙条家が今後陽鞠に関わることはないよ。叶空くんにも陽鞠にも二度と近づかないと約束させたからね」
「ええ!?」
「永翔が六条の力を借りることなんて珍しいのよ? 普段は私に頼み事なんて絶対しないんだから。それほど陽鞠さんと叶空くんを守りたかったのね」
「永翔さん……」
離婚届を提出したのは烙条家にとっては突然のことだ。
ろくな挨拶もせず、一方的に縁を切ったようなものなので罵られても仕方ないと思っていた。
だが誰も何も言ってこないことをずっと不思議に思っていた。まさか裏で永翔が動いていてくれたとは思っていなかった。
「言ったでしょ? 絶対に守るって」
「永翔さん……ありがとうございます」