訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。
永翔が尋ねると、マチ子は当然だと言わんばかりの口調で答えた。
「だって、陽鞠さんは私の恩人なのよ? その人が永翔のお嫁さんになるなんて、駆け付けないわけにはいかないじゃない」
「そんな、恩人だなんて大袈裟です」
「いいえ、私にとっては恩人なの」
マチ子は優しく陽鞠の手を取る。その手首にはあの腕時計があった。
「これはね、夫が私のためだけにプレゼントしてくれた世界に一つしかない大切な時計なのよ。大事な時計を見つけてくれたんだもの、恩人だわ」
「私はただ……自分にできることをしただけです」
「改めてあの時はありがとう」
「こちらこそありがとうございます」
時計はだいぶ古いものに見えるが、皮のベルトが古びているのも味わい深く大切に使っていることがよくわかる。
そんな大事なものを見つけることができて良かったと、心から思った。
「それにこんなにかわいい子まで! 永翔のちっちゃい頃にそっくりだわ!」
「本当に! こんにちは、お名前は?」
「とあ」
「かわいい〜〜!」
マチ子も有紗も叶空にメロメロになっている。
特に有紗はいかにもデキるキャリアウーマンというカッコよさに溢れているのに、叶空に向ける笑顔は緩みきった甘々全開だ。
「叶空くん、私のことはねーねって呼んでね」
「ねーね?」
「かわいすぎる! 天使だわ!」
「もうおばさんのくせに何言わせてるんだよ」
「お黙り、永翔」