訳アリママですが、敏腕パイロットに息子ごと深愛を注がれています。


 永翔が陽鞠の耳元で囁く。


「俺と結婚してくれて、叶空の父親にしてくれてありがとう」
「ちょっと……!」


 不意打ちでそんなことを言うのはずるいと思った。しかも撮影の真っ只中だというのに。


「私の方こそ……ありがとうございます」


 少し俯きながら小さな声で言うと、永翔はちゅっと陽鞠の頬にキスを落とす。
 見逃さないとばかりにカメラマンはシャッターを連打した。
「いいですねぇ、旦那さん!」なんて言いながら親指を立てている。


「叶空もママにちゅーして?」
「いーよー」


 永翔が言うと、叶空も陽鞠のほっぺたにちゅっとキスした。


「まま、だいすき」
「叶空……」
「ぱぱもだいすき」
「パパとママも大好きだよ」


 最後は三人でぎゅうっと抱きしめ合って撮影を終えた。
 カメラマンにはどれもすごく良い写真が撮れたと、嬉しそうにその場でデータを見せてくれた。

 パリの青空の下で笑っている三人は、どこから見ても幸せな家族だった。
 この日は間違いなく陽鞠にとって幸せな一日だったが、数ある中の一日に過ぎない。

 これから楽しいことばかりではないだろうし、大変なこともたくさんあるだろう。
 それでも永翔と二人で手を取り合って、大切に叶空の成長を見守っていきたい。

 何が合っても思いやりを持って大好きな永翔と叶空を大事にしよう。
 陽鞠は密かにパリの空に誓った。


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