遣らずの雨 上
1度目は触れるとすぐ離れ、
2度目は唇を覆われるように長くされ、
人生で初めてのキスの仕方も息継ぎの
仕方も何もわからず、現実ではないような出来事にただ涙を流すことしか
できなかった。
『新名、ゆっくり話をしたいけど、
明日も仕事だ。今日は温まって
ゆっくり休んで欲しい。いいね?』
「‥あ‥あの‥‥これは?」
肩からかけられたジャケットを
取ろうとするとそのまままたしっかりと
羽織らされ、綺麗な顔が笑った。
『それじゃ‥また明日。』
玄関の前まで送ってくれた酒向さんが
背を向けると、自然に伸びた自分の手が
あの時のようにまた勝手に動き、
慌ててもう片方の手で押さえる。
結局‥‥何も聞けてない‥‥‥。
放っておいて欲しいのに、あんな
優しくて苦しいキスの余韻を残して
いくなんて‥‥
15歳の頃、本の中の恋人同士が
初めてキスを交わした時の気持ちは
幸せそうで、お互いに思いが通じた
と感じられる一瞬だと書かれていた。
そんなことをこの歳までずっと
信じてたなんて‥‥馬鹿みたい‥‥
何故酒向さんがそうしたのか、
私も何故拒まなかったのかも
今になっても分からない‥‥
軽々しくそんなことをする人では
ないとは分かっていても、恋人でも
ない関係でそうしてしまったことを
悔やむ。
濡れた衣服を脱いで熱めのシャワーを
浴びながら、酒向さんからされた
キスを思い出し、また涙を流すことしか
出来なかった。
『ねぇ、あんた昨日何かあった?』
「エッ!?ゴホッ!!な、なんで?」
次の日、食堂でお昼休憩をしていると、
目の前に座ってこちらを覗く優子に
思わず咽せた。
彼女は変にこういうところに敏感
だったりするから侮れない。
『いつもと違うじゃない?
そんなにメイクして、もしかして
好きな人でもできたとか?』
ドキッ
あ‥‥そうか‥‥。
いつもは殆どお化粧をせずに日焼け止めと最低限のケアでナチュラルで
いたのに、目の腫れを隠すために
ファンデーションとアイメイクをして
誤魔化して来たのだ。
確かに3年間あの顔を見てきた人に
とっては、ちゃんとメイクをしている
自分の方がおかしく感じているに
違いない。
「そんなんじゃないよ‥‥。
なんか雑誌を見てて私も少しは
やらないとって思っただけ。
下手くそだからあまり見ないで。」
2度目は唇を覆われるように長くされ、
人生で初めてのキスの仕方も息継ぎの
仕方も何もわからず、現実ではないような出来事にただ涙を流すことしか
できなかった。
『新名、ゆっくり話をしたいけど、
明日も仕事だ。今日は温まって
ゆっくり休んで欲しい。いいね?』
「‥あ‥あの‥‥これは?」
肩からかけられたジャケットを
取ろうとするとそのまままたしっかりと
羽織らされ、綺麗な顔が笑った。
『それじゃ‥また明日。』
玄関の前まで送ってくれた酒向さんが
背を向けると、自然に伸びた自分の手が
あの時のようにまた勝手に動き、
慌ててもう片方の手で押さえる。
結局‥‥何も聞けてない‥‥‥。
放っておいて欲しいのに、あんな
優しくて苦しいキスの余韻を残して
いくなんて‥‥
15歳の頃、本の中の恋人同士が
初めてキスを交わした時の気持ちは
幸せそうで、お互いに思いが通じた
と感じられる一瞬だと書かれていた。
そんなことをこの歳までずっと
信じてたなんて‥‥馬鹿みたい‥‥
何故酒向さんがそうしたのか、
私も何故拒まなかったのかも
今になっても分からない‥‥
軽々しくそんなことをする人では
ないとは分かっていても、恋人でも
ない関係でそうしてしまったことを
悔やむ。
濡れた衣服を脱いで熱めのシャワーを
浴びながら、酒向さんからされた
キスを思い出し、また涙を流すことしか
出来なかった。
『ねぇ、あんた昨日何かあった?』
「エッ!?ゴホッ!!な、なんで?」
次の日、食堂でお昼休憩をしていると、
目の前に座ってこちらを覗く優子に
思わず咽せた。
彼女は変にこういうところに敏感
だったりするから侮れない。
『いつもと違うじゃない?
そんなにメイクして、もしかして
好きな人でもできたとか?』
ドキッ
あ‥‥そうか‥‥。
いつもは殆どお化粧をせずに日焼け止めと最低限のケアでナチュラルで
いたのに、目の腫れを隠すために
ファンデーションとアイメイクをして
誤魔化して来たのだ。
確かに3年間あの顔を見てきた人に
とっては、ちゃんとメイクをしている
自分の方がおかしく感じているに
違いない。
「そんなんじゃないよ‥‥。
なんか雑誌を見てて私も少しは
やらないとって思っただけ。
下手くそだからあまり見ないで。」