遣らずの雨 上
私が聞きたいこと?


「‥‥特に‥ありません。」


私が人の事に口を出せるほど
深く関わってはいけないと思うし、
何が事実か事実じゃないかを聞いても
どうすることも出来ない‥‥


『そう‥‥じゃあ勝手に話す。
 誤解されたままじゃ流石にツラい
 からね。
 色々な噂が噂を呼ぶように、
 社内で広まっていたが、宮川さんは
 既婚者だよ。相手は俺の親友だ。』


えっ!?


爆弾を落とされたかのような衝撃に、
俯いていた顔を上げると、私を見つめる
瞳が優しく笑った気がした。


宮川さんが既婚者?
旦那さんは酒向さんのお友達?


『この事を社内で知る人は殆ど
 いないから仕方ないが、プライベート
 でも付き合いがあるから仲が
 いいのは当然の事なんだ。
 ホテルやカフェで食事もするし、
 その事がこんなに噂になるなんて
 思ってはいなかったけどね‥‥。
 宮川さんの話はこれだけだよ。』



「‥そう‥だったんですね。
 お2人がお似合いでしたから、
 噂が立つのも仕方ないと思います。
 私も‥‥いえ‥‥何でもないです。」



そっか‥‥そうだったんだ‥‥。


そんな事をいいつつも、多分内心
ホッとしてしまったんだと思う‥‥


酒向さんの相手が宮川さんじゃなくて
良かったって‥‥。


『少しはヤキモチでもやいたのかなんて
 期待してみたが‥‥違った?』


えっ?


『雨の中を傘もささずに濡れて帰り、
 子供みたいに泣いてたな‥‥。
 俺の優しさがツラいって‥‥。』


隣に座る酒向さんの親指が私の瞼を
そっと撫でると、少しずつ近づいて
来たので両手で胸をそっと押した。


「私は‥‥ああいう事は初めてでした
 が、もう何とも思ってません。
 あれは‥‥あの日のことはなかった
 事にしてくださって構いません。
 私もちょっとおかしかったんです。
 だから‥」


『新名』


ドクン


至近距離のまま何処に視線を向ければ
いいか分からずあからさまに酒向さん
から顔を背けるのに、もう片方の手が
逃すまいと私の腰を抱いた。


近い‥‥‥このままだと危険‥だ‥


『新名が何が不安で逃げてるのかは
 分からないが、俺の気持ちを
 なかったことにはされたくない。
 ‥‥‥‥言っただろう?
 君のことを考えるとおかしくなると。
 キスをした時にこの気持ちは同じ
 だと思ったのは俺だけ?』


酒向さん‥‥‥
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