Thirty’s
「部外者の僕が、こんなことを言うのも何なんだけどさ。そんなに異例の人事なら、そこにはちゃんと理由があるんだよ。きっと。」


「どういう?」


「君がその部署に必要とされてるというか、期待されてるんだよ。そこでの経験が、将来の加奈にとって大きな力になるって。」


「総一郎・・・。」


「残念ながら、社会に出たら、自分の意に沿う仕事、業務に就けることの方が珍しいんじゃないかな?でもそこで、いちいち腐っていたら、結果として自分が損をすることになる。偉そうなことを言うようだけど、僕はそう思ってるんだ。だから、大変だとは思うけど、加奈も改めて頑張ってみなよ。僕も、及ばずながら、でも全力で応援するからさ。」


そんな俺の言葉を、加奈はじっと聞いていたが、やがて


「うん・・・総一郎、ありがとう。」


そう言うと、俺の首に抱き着いて来た。


「総一郎は大人だね。私、ちょっと恥ずかしい。」


「そんなことないさ。」


加奈にそんなことを言われて、思わず照れ臭くなってしまった俺だが


「そう言えば、あなただって、今までと全然違う仕事を頑張ってるんだもんね。」


と言われて、思わず固まってしまう。


「どう、少しは慣れた?」


加奈に問われ、唯のことを話そうか・・・そんな思いが一瞬胸をよぎった。


でも、せっかく笑顔を取り戻した加奈に、余計な心配を掛けたくない。そう思ってしまった俺は


「まぁ・・・ボチボチやってるよ。」


なんて答えでお茶を濁すと、あとは話を逸らすように、別の話題に移ってしまった。
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