Thirty’s
週末の朝。


ブランチを済ませ、ソファでまったりと時間を過ごしていると、後片付けを終えた加奈が俺の横に腰を下ろした。


「ありがとう。」


「ううん。」


そんな言葉を交わすと、加奈がそっと身体を寄せて来るから、躊躇うことなく、その肩を抱き寄せる。すると、嬉しそうな表情を浮かべた彼女が、俺の肩にチョコンと頭を預ける。


平日は相変わらず、すれ違いばかりの俺たちだが、週末にはこんな穏やかな時間を過ごせるようになってから、かれこれひと月になる。しばらく、お互いのぬくもりと一緒に過ごせる時間を楽しんでいた俺たちだったが


「でもさ、本当に酷いと思わない?」


思い付いたように、加奈が頬を膨らませながら、言って来る。


「辞令のこと?」


「そうだよ。調べてみたんだけどさ、大臣官房の係長クラスで留任なんて、少なくともここ十年では私くらいなんだよ。」


「そうなんだ。」


「大臣官房を経験するのは、出世の登竜門なんて言われてるけど、あんな非建設的な部署、一年でもうお腹いっぱいだよ。」


異動なしを電話で報告して来た時の加奈は相当おかんむりだったが、今もその憤懣は収まってはいないようだ。
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