Thirty’s
一週間後。


「おはよう、ソウくん!」


待ち合わせ場所である、古巣の営業所の最寄り駅で待っていると、背中から弾んだ声で呼び掛けられた。


「おはようございます。」


敢えて敬語で答えながら、振り向いた俺の目に映った唯は、いつものオフィスでのかっちりとしたスーツ姿よりは、いくらかカジュアルなパンツルックに身を包んでいた。


「どう?これならお客様のお宅に伺っても、固すぎず、柔らか過ぎず、でしょ?」


「いいと思います。じゃ、行きましょう。」


笑顔でモデルのようにワンタ-ンして見せる唯に、そう答えると、俺は歩き出す。


「ちょっとソウくん、いくらなんでも素っ気なさすぎない?」


横に並んで来て、膨れっ面で俺を見る唯に


「頼むから、営業所に着いてから、ソウくんなんて呼ばないでくれよ。」


釘を刺すように言う。


「そんなことするわけないじゃん。でも今は・・・。」


「営業所の誰が見てるか、わからないんだぞ。そんな浮かれ気分でいるんなら、中止だ。」


彼女の顔を見ずにそう言うと、俺は少し足を速めた。


「あっ、待って。」


慌てたような声を出す唯にチラリと視線を送りながら


(これじゃ、先が思いやられる・・・。)


内心、ため息を吐いていた。
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