Thirty’s
移動途中に昼食の為に立ち寄ったファミレス。


「午前中のお客様は奥さんがひとりだった。こちらは今日は君とふたりで伺ったけど、普通はひとりだ。女性ひとりのお宅に僕が上がりこむという図式を気にされるお客様は当然いるし、逆に男性のひとり暮らしの部屋に女性営業マンが伺うということになるのは、こちらとしても極力避けたい。こういう人員の配置とかはAIは得意としてるだろうし、またそんなリスクを避ける為に、オンライン見積もりは有効だろうね。」


「そうだね。」


「でもその一方で、実際に現場を訪ねないと分からないこともある。それは、今見てもらって感じてもらえたと思う。」


「うん。」


「オンライン見積もりは拡大して行くべきだと思うけど、でも一足飛びに舵を切るのは、まだ危ないんじゃないかな?オンライン見積もりに向く現場とそうじゃないという現場があるという現実を、理解してもらえたと思う。」


その俺の言葉にコクンと頷いた唯に


「じゃあ、午後は君がやって。」


と言うと


「・・・えっ?」


驚いた表情を向けて来る。


「見積もりを?」


「ああ。」


「私が?」


「もちろん。」


俺は静かに言った。


「午前中、一回見ただけだよ?」


「そうだね。」


「そんなの無理だよ。」


「現場の業務を体験したいって言ったのは君だ。」


そう言って、唯の顔を真っすぐ見る。そんな俺の顔を、唯もしばらく黙って見ていたが


「・・・ソウくんはいつからそんな意地悪になったの?昔はもっと私に優しかったよ。」


恨みがましい視線で言うから


「ちゃんと横にいるんだから、十分優しいだろ?」


と返して笑うと


「・・・わかった。」


しぶしぶと答えたけど、その横顔には、不安と緊張がありありと浮かんでいた。
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