Thirty’s
そんな彼女を少し見つめていたが


「でも。」


その声に、唯がハッと顔を上げる。


「結局、最後までやったじゃないか。」


「えっ?」


「途中で投げ出さなかった。」


「ソウくん・・・。」


「さすがは、僕たちのリーダ-だ。」


そう言うと、唯はしばらく俺を見つめていたが、やがて


「ありがとう。」


本当に小さな声でそう呟く。でも・・・その表情には、朝の浮ついた雰囲気はもうどこにもなかった。


「さぁ、帰ろう。」


「うん。」


そんな彼女は、柔らかな笑顔で頷いた。俺も思わず笑顔を返すと、エンジンをスタートさせる。


この後の唯のスケジュ-ルの都合で、今日は営業所には戻らず、直接本社に帰ることになっていた。黙って座っている彼女を横目で伺いながら、俺は考えていた。


正直に言えば、今日の研修なんて、専務のお遊びみたいなものだと思っていた。


少し見学をして


「勉強になりました。」


そう言って終わる、そんな程度だろうと。


でも、違った。


唯は、かつての甘えん坊ぶりをのぞかせてはいたが、でも決していい加減に投げ出すことなく、現場の厳しさを真正面から受け止めようとしていた。


(・・・少し、見くびってたのかもしれないな。)


そんな思いが、胸の奥に静かに芽生え始めていた。
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